急性前骨髄球性白血病(APL)では、PML-RARα遺伝子の発現により、PMLボディのみならず、PMLボディに局在化するMORC3の核内ドメイン(NDs)形成も破壊される事を示してきた。我々は、MORC3の核内ドメイン形成の分子メカニズムを解明すべく、MORC3のGHL-ATPaseドメイン、Coiled-coilドメイン、5箇所のSUMOylationサイトのアルギニンからリシンへの変異体(5KR)を用いて解析した。その結果、MORC3は、C末のCoiled-coilドメインを介して、構成的にdimerを形成し、N末のATPaseドメインへのATPの結合によりN末領域同士が結合し、PML非依存的にドメイン形成することを示した。さらに、PMLボディへの局在化には、MORC3のSUMO化とPML IのSUMO-interacting motif(SIM)ドメインが必要であることを示した。実際、マウス骨髄では多くのMORC3 NDsは、PMLボディとは共局在せず、SUMO1もPMLボディには存在するが、MORC3のみによって形成されたドメインには存在しなかった。一方、マウス胎児線維芽細胞では、Pml欠損細胞でもMORC3 NDsの形成を認めたが、野生型細胞では、ほとんどのMORC3 NDsは、PMLボディに共局在していた。それ故、MORC3 NDsは、2段階の過程を経て、PMLボディに局在する事が示された。今後、SIMドメインを持たないPML-RARαによって、なぜMORC3ドメインも共に破壊されるか、またMorc3ノックアウトマウスにおける造血異常のメカニズムを解析することにより、PMLボディの関わるAPLの病態やLeukemia-initiating cellsの維持機構を解明していきたい。
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