申請者は、TGF-βシグナルのネガティブフィードバック機構に関与する分子として単離したTMEPAIのがん進展に関する研究を行った。すでに他の研究者によって様々な腫瘍組織でTMEPAIの発現亢進が認められることが報告さていた。そこで、TMEPAI遺伝子のノックアウトマウスを作製し、Apc^<Min/+>マウスと交配し、発がんが抑制されるか否かについて検討した。しかしながら、ホモcompoundマウスでの腫瘍形成は、Apc^<Min/+>マウスとほとんど変化を認めなった。その理由として、最近申請者が、単離したTMEPAI類似分子C180rf1遺伝子の存在が考えられている。実際C180rf1もTMEPAIと同様にTGF-βシグナルを抑制することを見出している。そこで、C180rf1とTMEPAIの両遺伝子をノックアウトしたマウスを作製することで、腫瘍形成能に変化が見られるのではないかと考え、ES細胞でC180rf1遺伝子を欠損させ、現在このES細胞をマウス胚盤胞にインジェクションし、キメラマウスを作製中である。 TMEPAIは、TGF-βの直接の標的遺伝子であることより、その遺伝子発現調節機構に関しても検討を行ったところ、TMEPAI遺伝子のイントロン1内にTTEと呼ばれるTCF7L2が結合できる領域が、TGF-βによる遺伝子発現に重要なシス配列であることがわかった。実際この配列に変異を導入するとTGF-βによる発現誘導がほとんど認められず、TTE近傍に存在するSmadの結合配列であるSBEと強調し、TGF-βによるTMEPAI遺伝子の発現誘導に関与していることを見出した。実際、ChIPアッセイにおいても、TTE配列にTCF7L2がTGF-β依存的に結合すること、並びにこの領域を含むようにRNAポリメラーゼIIも間接的に結合していることを見出した。血管新生のin vivo研究に関しては、現在様々なKOマウスとCreマウスと交配し、その表現型の検討を行っている段階である。
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