TMEPAIファミリー分子であるC180RF1の機能解析を行い、C180RF1は、細胞内に恒常的に発現し、TGF-βシグナルを特異的に抑制することを見出した。この抑制機構として、TMEPAIと同様にC180RF1内に存在するSIMドメインとSmad2/3が結合するため、十分な量のSmad2/3がアダプタータンパク質であるSARAと結合できなくなり、その結果SARAがTGF-βI型受容体にSmad2/3を提示できなくなったためであると考えられた。実際、C180RF1を細胞内に大量発現させるとTGF-βによって誘導される細胞増殖抑制タンパク質の発現が抑制され、逆にC180RF1の発現を抑制するとTGF-βによって誘導される細胞増殖抑制タンパク質の発現が誘導された。また、TGF-βによる細胞の運動性亢進能がC180RF1で抑制されることが見出された。以上の結果より、TMEPAIファミリーであるC180RF1は、定常状態でのTGF-βシグナルを抑制し、過度のTGF-βシグナルが細胞内に伝達されるとTMEPAIが誘導され、C180RF1単独では抑制することができなかった過度のTGF-βシグナルをTMEPAIとともに抑制するという協調機構がTMEPAIファミリー間に存在すると予想している。 また、TMEPAIとC180RF1のダブルノックアウトマウスを作製したが、いまだ顕著な表現系を見出すことはできていない。今後は、様々な発がん誘導剤や他の自然発症発がんモデルマウスと掛け合わせることにより、がん化を検討していく予定である。
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