皮膚は直接外界と接し生体を防御している免疫臓器である。我々は、ヒト正常ケラチノサイトにおいて、合成核酸であるpolyIG刺激によってTNFα、IL-6、IL-8などの炎症性サイトカインの産生がおこることを見い出した。アダプター蛋白ASCは、マクロファージなどにおいて細胞内の感染監視システムで重要な役割を果たしている。前述の炎症性サイトカイン産生について、ケラチノサイトにも強く発現しているASCの関与をノックダウンの手法を用いて検討した。興味深いことに、TNFαおよびIL-8の産生はASC依存的であるがIL-6の産生はASC非依存的であることを発見した。またこれらのサイトカイン産生はMAPキナーゼ、p38の阻害剤で強く抑制された。これらのサイトカイン産生は、転写因子NF-κB依存的とされているが、今後ASCの下流でどのような遺伝子発現の制御が行われているのかについて解析を行う。 個体レベルでの解析を行うためには遺伝子改変マウスの実験が必須である。そこで昨年度確立した分離方法により、マウスからプライマリーケラチノサイトを調製し解析したところ、サルモネラ菌の感染によりTNFαの産生が強くおこることを見い出した。一方PYNOD(NLRP10)は、我々が発見した新規の細胞内分子であるが、個体レベルでの機能は全く不明である。しかし、今年度は長年の懸案であったPYNODノックアウトマウスの樹立に成功した。現在戻し交配中であるが、途中で得られたPYNODホモ欠損マウスおよびASC欠損マウスの胎児から調製したケラチノサイトについて解析を試みた。予備的実験からは、ヒトケラチノサイトとは異なり、ASCやPYNOD欠損ケラチノサイトにおいてもTNFαの産生は正常であった。今後は、マウスケラチノサイトについて他のサイトカイン産生能などについても検討するとともに、薬剤などを用いて皮膚疾患を遺伝子改変マウスにおいて誘発し、個体レベルでも解析を行う。
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