皮膚は直接外界と接し生体を防御している免疫臓器である。一方PYNOD(NLRP10)は、我々が発見した新規の細胞内分子であるが、現在までのところ、個体レベルでの機能は全く不明である。PYNODはマクロファージなどの免疫担当細胞に発現が認められるが、表皮、特にケラチノサイトで強い発現が見られる。今年度は、昨年度樹立に成功したPYNODノックアウトマウスおよびASC欠損マウスの胎児から調製したプライマリーケラチノサイトについて解析を試みた。マウスケラチノサイトはヒトと異なり感染刺激などでIL-1βやIL-6の産生が認められなかった。しかしTNFαについては、サルモネラ菌や緑膿菌の感染刺激やUVB刺激によって産生増強が認められ、この産生増強は転写レベルでおこっていることを明らかにした。興味深いことにPYNOD欠損マウスから調整したケラチノサイトでは感染刺激によるTNFαの産生は正常であったが、UVB刺激によるTNFαの産生が有為に低下していた。しかしUVB刺激によるJNKやp38の活性化はPYNODノックアウトマウスのケラチノサイトにおいても正常であった。さらにマウス個体背部にUVBを照射する実験を行い、表皮をサンプルとしてTNFαの産生についてRT-PCRおよび細胞抽出液のELISAで検討した。In vitroでのケラチノサイトの実験と同様に、PYNODノックアウトマウスでは野性型マウスと比較してUVB刺激によるTNFαの産生増強が減弱していた。またUVB照射後の血清中のIFNγの値がPYNODノックアウトマウスでは高値を示すことを発見した。以上の結果から、PYNODは皮膚においてUVB刺激後におこるTNFαの産生に関して重要な分子であることが明らかとなり、局所でおこる炎症反応において重要な分子と考えられる。またUVB刺激後におこる全身性の反応にも寄与する可能性が示唆された。
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