研究課題/領域番号 |
21590334
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
石田 敦彦 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 准教授 (90212886)
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研究分担者 |
山崎 岳 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 教授 (30192397)
根平 達夫 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 助教 (60321692)
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キーワード | CaMKP-N / PPM1E / プロテインホスファターゼ / CaMキナーゼ / 無細胞タンパク合成 / プロセシング / 活性断片 / 酵素学的解析 |
研究概要 |
CaMキナーゼホスファターゼN(CaMKP-N/PPM1E)は多機能性CaMキナーゼに特異性の高いプロテインホスファターゼとして見いだされたCaMキナーゼホスファターゼ(CaMKP/PPM1F)のホモログであり、脳特異的に発現している。哺乳類の脳内には完全長のCaMKP-Nのみならず、プロセシングを受けた様々なCaMKP-N分子種が存在している。しかしながら、完全長CaMKP-Nがプロセシングによって、どのように酵素学的性質が変化するのかについてはよくわかっていない。これらを解明するためには、完全長CaMKP-Nを含む各分子種を純粋な形で得る必要があるが、大腸菌や昆虫細胞などの発現系ではヒトCaMKP-Nは内在性のプロテアーゼですぐに切断されて各種断片を生じてしまうために、純粋な完全長標品を得るのは難しく、これまでにそのような標品を得て生化学的解析を行った報告はない。そこで、プロテアーゼの影響を受けにくいコムギ胚芽由来のin vitro合成系を用いて、N末にヒスタグを付けたヒトCaMKP-Nを合成したところ、従来法に比べて断片化をかなり抑制することができ、精製条件を工夫することによって、高純度の完全長CaMKP-N標品を再現性よく取得することができた。この方法で得られた標品は、CaMKIIの自己リン酸化部位を含む合成リン酸化ペプチド基質に対して、オカダ酸に非感受性でMn^<2+>依存性のホスファターゼ活性を示した。次に点突然変異の導入によって、脳内に多く存在することが示されているC末切断型CaMKP-N断片、CaMKP-N(1-559)を調製し、同様に単離精製して完全長標品の性質と比較したところ、CaMKP-N(1-559)は完全長CaMKP-Nに比べて顕著に活性化を受けていた。また、何れの標品も可溶性画分及びPSD画分の自己リン酸化型CaMKIIを効率よく脱リン酸化することも判明した。以上の結果から、CaMKP-NのC末部分のプロセシングは酵素を活性化するための機能的プロセシングであることが強く示唆され、昨年度の研究においてゼブラフィッシュの系で示された、C末プロセシングによる活性化機構がヒトCaMKP-Nについてもあてはまる普遍的な機構であることが示された。
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