乳癌の大部分を占める非遺伝性散発性乳癌においてmRNA核外輸送分子GANPの発現低下が高頻度に見られる。この発現低下の病態における意義を明らかにする目的で以下三点を中心に研究を行った。(1)Wap-Creマウスとgang-floxedマウスを交配して乳腺特異的GANP欠損マウスを作成し、乳癌の自然発症が見ちれるかを観察した。まだ解析数が少ないが50週齢を過ぎると約20%のマウスで乳癌発症を認め、平成22年度に継続して解析を行う。(2)p53 mRNA核外輸送の解析を行っだが、ganpヘテロ欠損胎仔線維芽細胞(MEF)を用いた解析では確かにp53mRNAの核外輸送が障害されタンパク量も激減する。しかしMEFはSV40で不死化していて恒常的にp53が発現している系のため、この現象が普遍性を持つのかを明確にする必要がある。 ヒト細胞株を用いてGANPをsiRNAでノックダウンすると逆にタンパク量が増加し、DNA損傷応答が誘導されていた。この差異を今後解析する細胞の種類を増やして明らかにする。なおヒトHeLa細胞を早いた解析でGANPはShugoshin-1 mRNAの核外輸送に関与することを明らかにし、哺乳細胞におけるmRNA核外輸送に選択性があることを示した。(3)GANPのmRNA核外輸送機構をさらに詳細に解析するために、結合分子Thp1をクローニングした。出芽酵母ではこの分子はmRNA核外輸送に重要な役割をしており、哺乳動物での詳細な機能を明らかにナるために平成21年度に樹立したThp1ノックアウトマウスの解析もスタートした。
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