βKlothoは選択的に線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体と複合体を形成する結果、FGF21との安定した結合が可能となり、細胞内への情報伝達が可能となる。興味深いことに、FGF21にインスリン活性を増強する機能のあることが遺伝子改変マウスを用いた実験から示され注目を集めている。 本研究の目的は、成長因子でありながら代謝機能を発揮するFGF21の作用機作の解析である。FGF21の活性発現にはβKlothoの存在が必要であることから、まず内因性βKlothoの発現部位の検定を行い、肝臓、小腸、皮膚、膵臓でβKlothoタンパクの発現を確認した。一方、FGF21はβKlotho依存的にFGF受容体を介して細胞内に情報を伝達する。FGF21が増殖ならぬ代謝に関わる機能を発揮するのは、受容体と複合体を形成するβKlotho依存的な因子があるからと想定した。、βKlotho、更には類縁分子であるαKlothoなどの各種安定発現細胞株を樹立し、His標識を利用し沈降実験を行った。その結果、それぞれに共通、または特異的な分子の共沈を認めた。質量分析による解析・同定を進める傍ら、生化学的解析を行ったところ、糖修飾を受けていることが判った。 同定した分子のうち、代謝機能と関わりの深い分子を優先して解析を試みたところ、マウス組織中で内因性の分子同士で結合している所見が得られた。 一方、βKlotho発現組織由来の細胞株を分化誘導する事で内因性分子の発現が誘導出来る事を見出した。興味深い事に、培地中の栄養条件を変える事でβKlothoの挙動に変化が見られた。 今回の知見から、栄養条件の変化がFGF21・βKlotho・FGF受容体複合体の局在・情報伝達制御を介し、代謝を制御するという機構を統合的に解明するきっかけが得られたと考えられる。
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