CDCP1のドメイン機能解析では、CDCP1細胞外3つのCUBドメインの内細胞膜に近いCUB2、CUB3がCDCP1の多量体形成に関与する事を欠失変異体の恒常発現系で明らかにした。また、細胞内ではCDCP1のアミノ酸の734番目のチロシンを含む領域が必須であることを欠失変異体での再構築実験で明らかとした。以上より、CDCP1の両領域が下流シグナル伝達に必要であることが示唆された。 がん細胞の運動能及び浸潤能では、CDCP1が癌浸潤に重要な構造体の浸潤突起で分解活性に関与する事をCDCP1抑制実験で明らかにし、また前年度のMT1-MMPとの結合から発展し、細胞内輸送系におけるCDCP1-とMT1-MMPの局在を各種抗体等で観察し、CDCP1がMT1-MMPの浸潤突起への輸送に関与していること示唆す-る結果を得た。今までCDCP1の浸潤に関与する機構は明らかではなかったが、今研究で浸潤装置である浸潤突起へのCDCP1によるMT1-MMP輸送機構を見出し、癌の浸潤に関与するCDCP1の機能の一端を明らかにした(論文投稿中)。 CDCP1の発現制御は、CDCP1の機能を制御する上で重要である。前年度の肺癌細胞株の結果を踏まえ、実際の肺癌組織検体をCDCP1抗体染色し、活性型変異RASの検体で優位にCDCP1発現が高いことを明らかにした。さらに、肺癌細胞株でのRASの発現及び、下流シグナルの阻害剤処理等により、CDCP1発現がRASと下流のERKシグナルにより制御されていることを明らかにした。これら結果から、RAS-ERKシグナルと、これまで報告してきたSRCによるCDCP1リン酸化が足場非依存性や細胞の浸潤・転移能に関わるというCDCP1の癌における機能モデルを提唱し、さらにCD(料が今まで明らかではなかった癌原遺伝子群の協調作用の1つのエフェクターであることを提唱した(論文投稿中)。
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