研究概要 |
Plk1は、分裂期に活性化する蛋白質リン酸化酵素(キナーゼ)の一種であり、分裂期開始に必須なCdk1の活性化などに重要な役割を担っていることが知られている。近年、DNA障害チェックポイントの際にはPlk1の機能が抑えられているが、逆にチェックポイントからの離脱の際にはPlk1の再活性化が重要な役割を担っていることが知られている。しかし、Plk1、Cdk1を含めた分裂期キナーゼ群とChk1を含めたチェックポイントキナーゼ群の詳細な連関はまだ不明な点が多い。我々は、本年度、Plk1の結合蛋白質として、新たに14-3-3ガンマを同定した。14-3-3蛋白質はDNA障害チェックポイントの際にも重要なメディエイターとして機能することが報告されているため、14-3-3ガンマのDNA障害チェックポイントにおける機能を検索した。その結果、14-3-3ガンマが、DNA障害チェックポイントの際に、Chk1のセリン296の自己リン酸化反応依存的にChk1と結合することが判明した。この結合により、Chk1と(14-3-3ガンマのもう一つの結合パートナーである)Cdc25Aが、14-3-3ガンマを介して結合することが判明した。この3者複合体の形成によりChk1はCdc25Aの分解に必要なセリン76をリン酸化できるようになること、および、このリン酸化反応によってCdc25Aが分解に導かれ細胞周期停止を引き起こしていることを見出した。以上の結果は、14-3-3ガンマが、DNA障害チェックポイントにおけるChk1からCdc25Aに至るシグナルを制御していることを示している(EMBO. J. , 2010)。今後、この14-3-3ガンマが分裂期またはチェックポイントからの離脱時にPlk1と結合し、その機能をどのように制御しているかについて、解析を加えていく予定である。
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