研究概要 |
核内構造とクロマチンの相互作用は、細胞機能,個体維持に不可欠である。本研究課題は、細胞の転写状態の維持に関わるクロマチンタンパクであるポリコームに焦点をあてた解析により、核構造変換を介した新たな核構造制御の分子機構の解明を目指す。これまでCbx2/M33は、発生過程において性分化、生殖腺、副腎、脾臓形成、体軸前後のアイデンティティーの決定、血球、リンパ組織分化等重要な発生過程に不可欠な因子である事が示されてきた。本課題では、CBX2/M33タンパクの出生後の組織維持機能を明らかにした。CBX2/M33KOマウスでは出生後、成長遅滞、皮下脂肪の菲薄化、長管骨骨密度の低下が認められた。組織化学的解析では、海綿骨領域骨髄内に骨芽細胞、骨細胞が少なく、逆に正常な老化個体で見られる肥大化した脂肪細胞が顕著に多く、破骨細胞の密度が有意に多いことは無かった。CBX2/M33KOマウス大腿骨、脛骨由来RNAを用いたRNA-seq発現解析では、骨芽細胞系列分化遺伝子Alpl, Col1a1, Bglap (ostecalcin)の発現量が低下していた。さらに、脂肪細胞分化制御遺伝子PPARgならびに脂肪細胞分化遺伝子Fabp4の発現量亢進を認めた。さらに分子制御メカニズムを明らかにするためにクロマチンタンパクのゲノム上の局在を、クロマチン免疫沈降法(ChIP)法によりマウス骨髄由来ストローマ細胞株ST2を用いて検討した。対象とする遺伝子領域は、発現抑制を受ける脂肪細胞分化制御遺伝子Pparg遺伝子および脂肪細胞分化遺伝子aP2遺伝子のプロモーター領域とした。対象領域において、CBX2/M33およびH3K27me3ヒストン修飾の集積を認めた。これらの結果から、骨髄間葉系細胞の分化制御カスケードにおいて、分化特異的に発現する遺伝子を標的にしたCbx2/M33による直接制御が強く示唆された。
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