アデニンヌクレオチド代謝は、ATPの維持調節、DNAやRNA合成の調節、また、細胞内シグナル伝達の調節など生体で極めて重要な機能を担っている、一方、AMPはAMP活性化キナーゼ(AMPK)を介して糖脂質代謝の制御の鍵を握っている。本研究では、所属研究室で既に樹立されたAMPD2ノックアウトマウスの解析を行うことにより、肝臓でのアデニンヌクレオチド代謝酵素をコードするAMPD2遺伝子の肝ヌクレオチド調節による脂質代謝制御機構を明らかにしようとするものである。今年度のAMPD2遺伝子に関する研究により、肝臓におけるAMPD2遺伝子とAMPKとの関係がさらに明らかになり、AMPD遺伝子群のうちAMPD2遺伝子がとくに肝臓脂質代謝に大きな影響を与えていることが明らかとなった。AMPD2ノックアウトにより全身の脂肪蓄積量が変化し、その原因として肝臓アデニンヌクレオチドの変化とAMPKのリン酸化状態亢進の関与が示され、AMPD2遺伝子機能と脂質代謝との深い関係が明らかになった。また、AMPD2遺伝子とレプチンなど脂肪代謝との関係が知られる因子との関係についての検討も進捗している。今後、研究の進捗により、AMPD2遺伝子の機能と脂質代謝制御や脂肪量の調節について詳細が明らかとなり、AMPD2遺伝子が肥満、糖尿病など代謝異常症の治療標的遺伝子候補となるのかどうかについて評価されることが期待される。
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