様々なエンドトキシンに対するTLR4の感受性の霊長類による違いを明らかにすることにより、霊長類の進化の過程における感染症の関わりへの理解を深めるとともに、感染防御機構の霊長類の種類による違いを明らかにすることを目的とする。様々な霊長類のTLR4の配列比較を基に、以下の4点を期間内に明らかにすることを本研究の目標とする。1)エンドトキシン感受性における霊長類TLR4細胞外ドメインアミノ酸配列の特異性、2)エンドトキシン認識機構における霊長類MD2、CD14、S100A8/A9アミノ酸配列の特異性、3)TLR4細胞外ドメインの立体構造予測とエンドトキシン感受性を決定するアミノ酸の同定、4)グラム陰性菌感染症に由来する歯周病を合併するバージャー病とTLR4遺伝子多型との関連。 霊長類7種(ヒト、チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、オラウータン、アガゲザル、カニクイザル)のTLR4アミノ酸配列より、TLR4の3D構造予測を行なった。細胞外ドメインのエンドトキシン認識に関わる領域に、正の自然選択の影響下にあるアミノ酸配列の違いが認められたが、3D構造予測では明らかな違いを検出することができなかった。また、バージャー病とTLR4遺伝子多型との関連を検討しているが、疾患感受性に関わる遺伝子多型を同定できなかった。現在、他のTLRファミリー遺伝子およびMYD88、TICAM1、TICAM2などのTLR情報伝達に関わる遺伝子とバージャー病疾患感受性の関連を検討し、バージャー病と病態が類似する高安病、慢性血栓塞栓性肺高血圧症とTLRファミリー遺伝子との関連についても検討を進めている。
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