研究概要 |
ゲノムDNAの様々な遺伝子座が細胞の種類により特異的にメチル化・アセチル化されていることに関連し,性分化関連遺伝子群とメチル化機構,あるいはX染色体のモザイク発症機構と性分化異常との関係ならびにSRY遺伝子のメチル化・アセチル化プロファイルを明らかにし,性分化の破綻機構およびその多様性の原因を解明することを目的として研究を行い以下の成果を得た。 1)XY染色体型表現型女性における性逆転機構を詳細な分子形態学的・細胞遺伝学的解析,網羅的分子遺伝学的解析およびメチル化・アセチル化解析を行い,さらにマイクロアレイ解析結果における遺伝子発現変異を明らかにした上で,データマイニング法により性腺分化機構の生物学的意義を明らかにし,雌雄性腺分化(発生)における破綻機構にエピジェネティクスが関与することを初めて示した。 2)B6 XYpos性逆転マウスを用いて,性分化調節機構の一端を解明することを企図したところ,従来の報告とは異なり,独立した精巣と卵巣の両方を有する個体が得られたため,性成熟後,性成熟期,性成熟前の順に性腺を遡って解析し,次いで,胎齢11.5日において,生殖巣堤における転写因子,Sox9,Fox12およびSF-1の局在について分子形態学的に検討した。とくに,右卵巣/左精巣個体において左右特異的に性腺が発生している点は大変興味深く,胎齢11.5日での左右生殖巣堤間におけるSox9発現の差がはじめて明らかとなり,左右特異的に性分化が起きることを考察した。さらに,Sry導入XXマウスの性腺の生後経時的変化について野生型雄マウスとの比較解析を行い,導入したSryにより雄性化が進行し,Sox9の発現が認められたが,その雄性化には種々の異常が今回新たな知見として認められた。この事からSry以外のY染色体上の遺伝子の関与や,Sryカスケード以外の他の調節因子の関与を新たに想定している。
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