研究概要 |
神経系の発生過程では様々な細胞接着分子が発現し、細胞間相互作用に重要な役割を果たしている。コンタクチン4(Cntn4)は免疫グロブリンスーパーファミリーに属する細胞接着分子であり軸索伸長やシナプス形成に関与しているものと考えられている。また、自閉症スペクトラム障害症例でコピー数多型・転座・欠失などのCntn4遺伝子(CNTN4)の構造異常が報告されており,この遺伝子の何らかの発現異常が高次脳機能に影響を及ぼす可能性が考えられた。本研究ではCntn4のノックアウトマウスを作製してCntn4の機能解析を行い、自閉症との関連を調べることを目的としている。今年度はCntn4欠損により発現が変動する遺伝子群を抽出するためにマイクロアレイによる網羅的発現解析を施行した。まず、野生型および変異型マウス各3匹の大脳皮質と嗅球からRNAを調整し、Illumina社マイクロアレイ(Mouse WG-6 Beadchip)で解析を行った。その結果変異型マウスの大脳皮質で23遺伝子の発現増加、39遺伝子の発現減少、嗅球では164遺伝子の発現増加、52遺伝子の発現減少が観察された。これら発現変動遺伝子群の中には自閉症関係の3遺伝子を含む複数の精神神経疾患関係の遺伝子が含まれておりパスウェイ解析の重要性が示唆された。再現性についてはRT-PCRなど別の方法でさらなる確認が必要であり、その他の発現変化の大きい遺伝子も合わせて解析を進めている。
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