研究概要 |
「統合失調症感受性遺伝子アレルが平衡選択で維持されている」という仮説を検証するために、これまでに報告された全ての統合失調症の遺伝解析を統合したメタ解析のデータベース、SZGene(Allen et al 2008, http://www.schizophreniaforum.org/res/sczgene/default.asp)から、解析対象遺伝子を選択し、全変異検出と頻度スペクトラム法(Tajima's D(以下TD))による中立性の検定と、合体シミュレーションによる系図解析を行った。まず前年度に引き続いて、COMT、DRD1、DRD2、DRD4の4個について、有意な関連が報告されたSNPの周辺領域各7kbおよび上流領域5kbを対象に、ヒト72検体、チンパンジー24検体の全変異検出をダイレクトシークエンスにより行った。その結果、DRD2において統合失調症との強い関連を示すSNPs(rs6275,rs6277)周辺において、ヒト特異的なかつヒト3大集団に共通な平衡淘汰を検出した(TD=+2.15-+2.71)。また、昨年度の研究で、ヒト3大集団に共通な平衡淘汰を検出したCOMTのrs4680(Val158Met)周辺について、合体シミュレーションによりこの領域を構成するハプロタイプの年代測定を行ったところ、この領域のTMRCAはヨーロッパ人とアフリカ系アメリカ人では非常に古く、100万年を越えていた。また、得られた遺伝子系図は、ヨーロッパ人とアジア人においては平衡淘汰を強く支持していた。一方、チンパンジーにおいてはヒトに比べてこの領域の遺伝的多様性が大幅に減少していたことも見いだした。これらの領域で検出された平衡淘汰のターゲットは、統合失調症及び高次脳機能に関連する表現型であった可能性が高いと考えられた。
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