今年度は未分化型胃癌15例、26サンプルにアレイCGHを行い、分化型でdormantパタン(MYC-/TP53+)とaggressiveパタン(MYC+and/or TP53-)との間で逆のコピー数変化を示した、上皮間葉転換(EMT)や腸形質等に関連する遺伝子のコピー数解析、分化型との比較、クラスター解析および遺伝子コピー数と蛋白発現との関係の解析を行った。EMT関連では、CDH1にはあまり変化はなく、ITGA6(上皮性)とITGA5(間葉性)は粘膜内癌の多いクラスターで、それぞれコピー数増加と減少を示し、浸潤癌の多いクラスターでは逆に、それぞれ減少と増加を示し、分化型と基本的に同様であった。またこれは、発現レベルで未分化型の粘膜内癌から浸潤部へ行くにつれてEMTが起こっていたことと平行していた。一方、腸形質の遺伝子、特にMUC2は、未分化型の粘膜内癌でコピー数が増加、浸潤癌で減少する傾向があり、発現とは平行する一方、分化型のコピー数変化とは逆であった。しかし発現レベルではepigeneticに補正されたためか、分化型と未分化型との間では大差が無かった。このように、未分化型では(層構造を含む)粘膜内癌からゲノムコピー数依存性に遺伝子が発現する傾向があった。遺伝子コピー数変化の方向もaggressiveパタンが多く、分化型粘膜内癌の約70%で見られたdormantパタンは、検索した未分化型粘膜内癌8例中に1例も見出せなかった。つまり、分化型はゲノムレベルで2つの系譜が識別できたが、未分化型はゲノムレベルでは粘膜内癌から進行癌と共通した遺伝子コピー数変化を示す単一の系譜に属すると推定された。振舞いとしてdormantな層構造では基本的にaggressiveなコピー数変化が既に存在しているが、epigeneticに補正されていると考えられた。
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