研究概要 |
がんの発生・進展過程における「がん-間質相互作用」の重要性について、骨髄由来間葉系幹細胞(bone marrow-derived mesenchymal stem cell:BM-MSC)に着目し各種検討を行った。高分化型胃癌細胞株MKN-7とBM-MSC細胞株UE6E7T-12の共培養を行うと、両者は特徴的な接着・凝集を示すのみならず、MKH-7細胞の著明な増殖亢進が観察された。興味深いことに、BM-MSCとのコンタクトによってMKN-7細胞中のがん幹細胞マーカーCD133陽性細胞の割合が増加し、マウス皮下での造腫瘍能亢進や多分化能再獲得も確認されたことから、BM-MSCは胃癌細胞のがん幹細胞性再獲得に有利な微小環境を提供している可能性が示唆された。cDNAマイクロアレイ用いた発現遺伝子の網羅的解析により、BM-MSCとの接触はMKN-7細胞はwingless-type MMTV integration site family, member 5A(WNT-5A)とtransforming growth factor-β(TGF-β)の刺激を受けていることが明らかとなった。事実、WNT-5AとTGF-β両因子はMKN-7細胞のがん幹細胞性再獲得・維持に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。BM-MSCはスキルス型胃癌組織内部にも観察されたことから、がん幹細胞性の再獲得・維持に必要な微小環境を提供している可能性が示唆された。 大腸癌の進展過程においても検討を行っており、がん幹細胞のCDX2発現による分化の制御にTGF-βが密接に関与しており、がん細胞の幹細胞性維持や悪性度、組織学的に捉えられるtumor buddingはこれに大きく影響を受けることを明らかにした。
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