研究概要 |
レーザーマイクロビームマイクロディセクション法にて、ヒト前立腺癌、特にホルモン非依存性前立腺癌の各症例組織切片の腫瘍部より目的とする細胞を採取し、cDNAマイクロアレイ解析法を応用することによりホルモン非依存性前立腺癌で特異的に発現している癌関連遺伝子の道程を試みた。cDNAマイクロアレイ解析に関しては、UniGeneデータベースを基に選択された23,040種のcDNAを有するcDNAチップを使用しArray Visionソフトウエアを用いて解析を行った。その結果ホルモン非依存性前立腺癌における癌関連遺伝子産物としてRAM(SNRPE)及びKURO3(SHISA2)を同定し、その連遺伝子産物を抗原として抗体を作製した。今回同定し得た両遺伝子とも、ヒト前立腺癌細胞株にて過剰発現させると、それら細胞増殖が亢進し、それぞれの遺伝子に対応するsiRNAによるノックダウン効果を判定したところ、用いた前立腺癌細胞株にて細胞増殖が抑制された。さらに作製した抗体を用いて免疫組織化学的に前立腺癌症例における発現を検討したところ、その発現は正常前立腺組織では減弱しているが、癌組織では、症例により程度の差がみとめられるものの過剰発現がみられ、特にホルモン非依存性前立腺癌症例、およびホルモン依存性前立腺癌においてはGleason scoreが高い症例に高発現を示す結果となったが、Gleason scoreが低い症例との間には有意差は認め得なかった。前癌病変としてのPINについての発現に関しては、ホルモン非依存性前立腺癌症例におけるPIN病変自体の組織学的同定が困難であり、今後の課題となった。
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