研究課題
本研究では、腎癌の予後を規定する転移に関わる分子の同定をめざし、腎細胞癌の手術時採取された原発巣と再発転移巣のゲノム異常(ゲノムコピー数異常とゲノムの異常メチル化)を解析し比較することで再発(転移)に関わる遺伝子異常を同定することを目的としている。(1) 腎細胞癌症例のうち、原発巣を手術的に摘出後、遠隔転移で再発し転移組織を外科的に切除された症例15例を選び、原発巣ならびに転移巣のパラフィン包埋組織からLaser Captured Microdissection(LCM)を用いて癌組織のみを切り取り、ゲノムDNAを抽出した。(2) (1)で抽出したゲノムDNAを用いてアレイCGH解析を行い、両群間において異なるゲノム異常を同定した。その結果、大きく二つのパターンに分けられた。一つは、原発巣に比較して転移巣でゲノム異常が付加されたもの、もう一つは、原発巣と転移巣ではゲノム異常のパターンがほとんど異なるものであった。また、原発巣に比較して転移巣でゲノム異常が有意に高頻度にみられた領域を統計学的に抽出し、遺伝子レベルでの解析を進めている。(3) 症例のゲノムの網羅的メチル化状態を解析するため、まず腎癌細胞株を用いて、プロモーター領域のメチル化を、ethylated DNA immunoprecipitation (MeDIP)法と呼ばれる方法を用いて調べた。その結果、腎癌に特異的にメチル化を示す領域や遺伝子の候補を見出した。以上の結果、転移特異的にゲノム異常を示す領域と遺伝子の候補を抽出し得たことから、今後遺伝子の機能解析により、腎癌の転移に関わる遺伝子を同定することにつながると考える。また、原発巣と転移巣でのゲノム異常のパターンから、癌のクローナルセレクションに関わる知見が得られたと考えられた。今後、候補遺伝子の機能解析、メチル化の異常を解析し、さらに標的となる遺伝子に近づきたいと考えている。
すべて 2010 2009
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Invest Ophthalmol Vis Sci. 51(1)
ページ: 7-11