研究課題
肺腺癌の多くは末梢気道上皮から発生し、転写因子Thyroid Transcription Factor-1(TTF-1)を発現している。一方、小細胞癌の多くは通常TTF-1を発現していない中枢気道から発生するにもかかわらず、肺腺癌に比してはるかに大量のTTF-1を発現している。本研究では、TTF-1が肺小細胞癌の生物学的特性にどのように関与しているのか、そしてなぜ小細胞癌に大量のTTF-1が発現されているのか、という命題について、病理組織学的および分子病理学的に解析を行い、TTF-1が関与する悪性神経内分泌細胞特異的分子発現誘導システムの全容を明らかにしていくことを目的とする。本年度は前年度の知見を踏まえ、TTF-1の発現に関わる可能性のあるホメオボックス遺伝子の探索を行った。その結果、TTF-1遺伝子プロモーター解析およびそのプロモーター変異解析により、FOX結合領域およびHOX/Lim homeodomain蛋白結合領域がTTF-1発現に重要であることが判明した。そこで肺癌細胞におけるFOX、HOX、Lim homeodomain蛋白の発現状態について検索を進めたところ、TTF-1発現の見られる細胞株でFOXA2の発現が高いこと、また小細胞癌株ではLHX2およびLHX6の発現が高いことが明らかになった。またTTF-1を発現していない肺癌細胞株にTTF-1遺伝子を導入することにより安定発現株を作成した。これを用いて細胞増殖解析、遺伝子発現解析を行ったところ、TTF-1強制発現により細胞増殖は抑制されること、また本来発現していなかったSurfactant protein A、Surfactant protein Bの発現がASCL1の共発現により誘導されることが明らかになった。
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