研究概要 |
マイクロRNAは,進化において保存されている20塩基程度の短い内在性non-coding RNAで,標的mRNAに特異的に結合し,mRNAの翻訳抑制を行い,遺伝子発現を制御している.マイクロRNAが遺伝子の少なくとも30%を制御していることや,腫瘍の発生や進展において重要な役割を持つことが次第に明らかにされてきた.われわれは4種類の成人細胞白血病/リンパ腫(ATL/L)細胞株を用いたマイクロRNAアレイ解析を行い,数種類のマイクロRNAが,ATL/L特異的に発現増加または減少していることや,ATL/L特異的染色体欠失部位に位置していることを認めた.得られたマイクロRNAの発現パターンをATL/L,非特異的末梢性T細胞リンパ腫,血管免疫芽球性T細胞リンパ腫などのT細胞性腫瘍症例において解析した.これらの臨床症例では,細胞株にて得られたデータの一部は再現されたが、再現されないデータもあった。さらに,ATL/Lに焦点を当て,データの再現性を検討したところ,3種類のマイクロRNAが良好な再現性を示した.これらのマイクロRNAに関して、ATL/L患者の予後解析を行ったところ,1種類のマイクロRNAの低発現は患者の不良予後と有意な相関を示した。また予後以外の因子との相関は示されなく,このマイクロRNAは独立予後不良因子の可能性が高い.現在このマイクロRNAをATL/L細胞株で強制発現させ,機能解析を進めている。同時に研究成果の論文発表を進めている.
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