研究概要 |
テロメア短縮病変は組織学的にはほとんどがdysplastic intestinal metaplasiaの像を示すことから、まず、腸上皮化生において変化を示す遺伝子を検討した。腸上皮化生で過剰発現する遺伝子としてcripto(CR-1,TDGF-1)を報告者はすでに報告しているが、この遺伝子のcDNAを用いてサザン法で遺伝子変化を検討すると2.2-2.4kbpのfragmentの欠失が癌周囲腸上皮化生粘膜と胃癌組織に認められる。この欠損フラグメントをシーケンシングすると、昨年度研究実績で報告したTDGF-1が高い相同性を示したが、これとは別にCYP2D6との相同性を有するフラグメントも認められた。CYP2D6は、肺癌ではタバコ特異的ニトロサミンの活性化に関与するが大腸癌では低活性化型SNPを有する患者で、大腸粘膜内ATPase活性が高いとの報告がある。CYP2D6の非担癌胃粘膜における発現は全例で見られ、男性より女性で高く認められた。そこで、short telomere lesionが同定されたホルマリン固定胃切除全割標本でCYP2D6の発現を検討すると、short telomere lesionを含む腸上皮化生粘膜で発現はほぼ保たれていた。しかし、CR-1との相同性を示したフラグメントを用いてISHを行うと発現の低下が認められ、特に、short telomere lesionでは発現は非常に低かった。以上のことから、酵素活性の異なる変異型CVP2D6がshort telomere lesionに発現している可能性が考えられ、現在、詳細を検討している。
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