研究概要 |
早期大腸癌の多くは外科的に切除されているのが現状であるが,近年進歩を遂げた低侵襲的内視鏡治療を導入するには的確なリンパ節転移の予測・診断が必要である.そこで我々は,腫瘍の浸潤・転移に関与する遺伝子をマイクロアレイ解析した結果をもとに,早期大腸癌のリンパ節転移におけるCXCR4とそのリガンドSDF-1αの役割を明らかにすることを目的とした.まず,本年度は,大腸癌およびそのリンパ節転移部におけるCXCR4とSDF-1α発現様式の臨床病理学的意義を検討した.その結果,CXCR4発現はリンパ節転移と有意に相関し,特に核発現パターンを呈するCXCR4発現はリンパ節転移と生命予後に強く相関した.加えて,SDF-1α発現もリンパ節転移および生命予後に相関することが見出された.興味深いことに,原発巣でCXCR4が核発現パターンを示していた大腸癌でも転移先のリンパ節では膜・細胞質発現に変化する所見が認められた.この現象にはSDF-1α刺激が関与する可能性があり,実際リンパ節内でSDF-1α発現が増強しており,今後SDF-1α刺激がCXCR4発現パターンの変化に及ぼす機序とその現象の意義を検討する必要があると考えている.
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