早期大腸癌の治療は患者にとって可能な限り低侵襲な内視鏡的切除術が望まれるが、現状ではリンパ節転移の危険性(10%以下)を考慮して、外科的に切除されている場合が殆どである。従って、早期大腸癌のリンパ節転移メカニズムを解明し、リンパ節転移を予測するマーカーを確立すれば早期大腸癌を低侵襲な内視鏡的切除で治療する道が開かれる。そこで、本研究では、CXCR4とSDF-1αの発現様式が早期大腸癌のリンパ節転移の予測マーカーとして有用であるか明らかにすることを目的とする。 大腸癌組織におけるCXCR4とSDF-1αの発現に関する病理組織学的検討 腫瘍組織内における発現の局在:正常大腸粘膜では粘膜上皮の細胞質と細胞膜にCXCR4およびSDF-1αが僅かにその発現を観察したが、腫瘍細胞ではその発現の頻度を増し、細胞質と共に核内での発現も認められた。大腸癌培養細胞株での免疫細胞化学的観察ではでの細胞質のみならず核内でもその発現を示し、Western blot解析でも各細胞分画での検討では細胞質だけでなく、核内にも両者の発現を認めた。 臨床病理学諸因子との相関:CXCR4は年齢、性差、腫瘍の存在部位や分化像とに相関をみとめない一方、病期及びリンパ節転移の有無と有意な相関(p<0.01)を示し、さらに細胞内局在の違いでも、同様の傾向を示した。両因子とも発現している症例や核内発現例では、有意に患者予後が不良である(p<0.05)ことから、両因子発現の有無と局在の差異で患者層別化が可能となった。 両因子の発現の相関ICXCR4とSDF-1αはその発現の有無と細胞内局在との間に有意な相関を認めた(p<0.005)。
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