【研究の目的】 早期大腸癌の治療は、患者にとって可能な限り低侵襲な内視鏡的切除が望まれるが、現状はリンパ節転移の危険性(10%以下)を考慮して、外科的に切除されている場合がほとんどである。従って、早期大腸癌のリンパ節転移メカニズムを解明し、リンパ節転移を予測するマーカーを確立すれば早期大腸癌を低侵襲な内視鏡的切除術で治療する道が開かれる。そこで本研究では、CXCR4とそのリガンドであるSDF-1αの発現意義を臨床病理学的に解明し、CXCR4とSDF-1αの発現様式が早期大腸癌のリンパ節転移の予測マーカーとして有用であるか明らかにすることを目的とする。 【研究実施計画】 (1)大腸癌組織おけるCXCR4とSDF-1αの発現に関する病理組織学的検討 (1)腫瘍組織のおける発現の局在:手術によって得られた症例の原発巣におけるCXCR4とSDF-1αの発現の局在を免疫組織学的に検討し、リンパ節転移との相関性に関して比較する。 (2)共発現の因子の検索:低酸素状態におけるCXCR4の発現を増強させるHypoxia inducible factor:HIFおより基底膜関連物質であるLaminin-5γ2chainとの共発現の有無を検討する。 (2)CXCR4/SDF-1αシグナルの遊走・接着能及び腫瘍細胞集塊からの解離におよぼす効果の検討 (1)遊走・接着能との相関:大腸癌細胞株へのCXCR4遺伝子発現ベクターを用いたCXCR4強発現細胞やsiRNAによるCXCR4の抑制させた細胞などが遊走能や接着能に変化をおよぼすかを検討する。 (2)細胞集塊解離におよぼす影響:大腸癌細胞における培養条件を単層性かSpheroid形成をさせた細胞株において両因子の発現に差異があるか、また集塊からの解離に影響をおよぼすか検討する。
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