研究概要 |
134症例の外科切除肺癌を無作為に抽出し、チロシンキナーゼ抑制剤(TKI)抗腫瘍薬の効果を規定するEGFR遺伝子変異のhot spotであるexon19の欠損とexon 21のL858Rの点変異を、通常PCRとdirect sequencing法を用いて検索した。各変異陽性例より、laser microdissectionにて微量の腫瘍細胞を8カ所から別々に採取し、nested PCRによるDNA増幅後direct sequencingを行った。その結果は以下の通りである。 (1) 33症例(24.7%)が上記EGFR変異を有しており、その31症例(93.9%)は腺癌であった。 (2) 33症例のうち、18症例はL858R点変異、15症例はexon 19欠損であった。また、計5種のexon 19欠損が検出された(type A delE767-A7507例、type B delE740-A7503例、delL747-T7513例、delL747-E749, A750P 1例、delL747-S752, P753S 1例)。 (3) Microdissectionに基づいた微量腫瘍細胞の変異分析では、11症例(73.3%)のexon 19欠損腫瘍と15症例(83.3%)のexon 21 L858R点変異腫瘍から、野生型のEGFRを持つ腫瘍細胞も検出された。 以上より、EGFR変異を有する肺癌の殆どは腺癌であり、その多く(全体の約78.8%)に野生型EGFRを持つ腫瘍細胞も混在していることを明らかにした。従って、多くの肺癌のEGFR遺伝子変異にはヘテロジェネイティ性があり、それはTKI抗腫瘍薬の治療効果に影響するとともに、野生型EGFRを持つTKI耐性クローンの選択的な生き残りが腫瘍の薬剤耐性能の獲得にも関与する可能性が高いと考えられる。
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