研究課題
1. アルツハイマー病患者の脳におけるシトルリン化蛋白質の分子病理学的解析アルツハイマー病の患者脳におけるシトルリン化蛋白質の生成、蓄積を免疫組織染色により調べた。その結果、アルツハイマー病患者の脳(海馬とその周辺)では、病状の進行程度に応じシトルリン化蛋白質の異常な蓄積が確認された。強染された細胞は、主に反応性アストロサイトであった。それ以外にもオリゴデンドロサイト、ミクログリアなどのグリア細胞が染色された。また、神経細胞の一部も染色された。同時に、アミロイドベータ蛋白質(Aβ)やリン酸化タウに対する抗体を用いた連続切片による免疫組織染色を行った。その結果、Aβ陽性の老人斑やリン酸化タウ陽性の神経原繊維変化とシトルリン化蛋白質陽性部位が一致した。Aβやリン酸化タウがシトルリン化されているかは明らかではない。一方、正常脳では、シトルリン化蛋白質は、ほとんど検出されなかった。これらの結果は、アルツハイマー病患者の脳では、PADの異常な活性化が起きていることを強く示唆している。今後、さらに患者検体数を増やし、結果の信頼性を高めて行く必要がある。2. シトルリン化蛋白質のプロテオーム解析アルツハイマー病脳におけるシトルリン化蛋白質分子の同定のために二次元電気泳動法、質量分析計を用いたプロテオーム解析を行った。その結果、ミエリン塩基性蛋白質(MBP)、グリア繊維酸性蛋白質(GFAP)、ビメンチンがシトルリン化されていることを同定した。これら以外にも多数のシトルリン化蛋白質が存在した。特に、Aβやリン酸化タウがシトルリン化を受けているかは非常に興味深い。そのため、今後もプロテオーム解析を進める必要がある。
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