研究概要 |
1.広基性鋸歯状ポリープ(SSP)は、組織診断基準が一定していないことから、文献的に特徴的な所見とされる(1)陰窩底部の鋸歯状変化、(2)陰窩底部の分岐等の構造異型、(3)表層部の微小乳頭状変化、(4)表層部での核異型の4項目をスコア化し、SSP60例、通常型腺腫40例、過形成性ポリープ40例でスコアの比較を行った結果、SSPでは他の病変に比べ、有意に高いスコアであった。 2.1.で得られたスコアを元にSSP20例、通常型腺腫20例、過形成性ポリープ20例を抽出し、DNAミスマッチ修復関連遺伝子蛋白4種(hMLH1, hMSH2, MGMT, DNT3b)の免疫染色を施行した結果、SSPでは他の2群に比べ有意に発現低下例が多いことが明らかとなった。このことから、SSPではDNAミスマッチ修復関連遺伝子のメチル化が高頻度に起こっており、それによる蛋白発現の低下が推測された。 3.2.の結果から、SSP10例、通常型腺腫10例、過形成性ポリープ10例について、MGMT遺伝子メチル化の検索を行った結果、SSPでは他の2群に比べ、メチル化の頻度が高いことが明らかとなった。 4.細胞増殖シグナル伝達に関与するBRAF遺伝子exon3の変異に関して、SSP10例、通常型腺腫10例、過形成性ボリープ10例を対象とし、直接塩基決定法で解析した結果、SSPでは他の2群に比し、有意にその頻度が高い傾向がみられた。 5.細胞増殖シグナル伝達に関与し、BRAF遺伝子とは相反する関係にあるKras遺伝子exon1(コドン12,13)の変異について直接塩基決定法で解析した結果、SSPでは他の2群に比べ有意にその頻度が低いことが明らかとなった。4,5の結果から、SSPの増殖に関してはBRAF変異が強く関連し、Kras遺伝子変異の関与は少ないものと推測される。 6.文献的に掲げられた候補となる3種類のmicraRNAについての発現の差異はみられたが、検索例数が少なく、今後症例を重ねて検索してゆく予定である。 7.患者様の同意を得るための倫理委員会の承諾が得られていないため、研究対象症例の新鮮凍結材料の確保が困難で、microRNA arravによる発現プロファイルの解析については検索できていないが、既に倫理委員会に研究計画書を提出しており、委員会での承諾を待っている状況である。
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