研究概要 |
近年、高度のmicrosatellite instability(MSI-H)を示す大腸癌の前癌病変として、鋸歯状ポリープ(SSP)の重要性が示唆され、SSP及びMSI-H大腸癌では共通して、DNAミスマッチ修復遺伝子(MMR)のメチル化とれに伴う蛋白発現の低下が報告されてきた。我々も同様に、平成21年度の研究成果として、SSPでは過形成性ポリープ(HP)、通常型の腺腫(TA)と比較して、MMR蛋白(hMLH1,hMSH2,MGMT)発現の低下が高率であることを明らかにした。次に、SSP-MSI-H大腸癌癌化過程ではMMRのメチル化とともに、ある種のmiRもメチル化により発現抑制されるとの仮説を立て、平成22年度にはSSP, HP, TAのmicroRNA(miR)20,miR21,miR93,miR181の解析を行った結果、miR20:SSP0.76±0.11,HP2.7±0.33,TA3.0±0.37(P<0.0001),miR21:SSP0.51±0.12,HP0.17±0.04,TA0.61±0.32(P<0.0001),miR93:SSP0.41±0.09,HP0.13±0.03,TA1.32±0.14(P<0.0001),miR181:SSP1.94±0.28,HP0.13±0.02,TA0.77±0.1(P<0.0001)とSSPではHP,TAと比較してmiR20の発現が有意に低い一方、miR181の発現が有意に高いことを明らにした。この成果から、組織学的にHPとの鑑別が困難なMSI-H大腸癌の発癌リスクの高いSSPを、miR20,181の発現プロファイルによる鑑別可能性であることが示された。さらに、将来的にはSSPの発生やその癌化抑制にagomiR20やantagomiR181の臨床応用が期待できる。平成23年度は、これまで癌化していないSSPのみを検討対象としてきたため、新たに癌を伴うSSPについてのmiR20,21,93,181発現について追加検討する予定である。
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