研究課題
Pentraxin 3(以下PTX3)は臨床で汎用されている急性期蛋白のCRPとともにpentraxin familyに属する分子であり、マクロファージなど種々の細胞から産生され、炎症や免疫における役割が想定されている。本年度は潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis、以下UC)について抗PTX3抗体をはじめ種々の抗体を用いて免疫組織学的に検討し、PTX3の発現細胞の同定を行い、UCの重症度とPTX3の関係を検討した。さらに、好中球におけるPTX3の動態について培養系における検討を行った。生検組織を用い、UCの炎症の程度を3段階に分け、好中球、リンパ球、マクロファージの浸潤を免疫組織学的に同定して、PTX3の発現と比較した。PTX3は主に好中球に発現し、UCの炎症の程度に比例して好中球とPTX3陽性細胞が増加したことからPTX3はUCの重症度を反映することが示された。共焦点レーザー顕微鏡による観察ではPTX3は好中球の特殊顆粒に局在した。interleukin 8を添加して好中球を培養するとPTX3陽性細胞が減少したことから、PTX3は好中球から放出されるものと考えられた。好中球は炎症刺激によってアポトーシスに陥るが、それ以外に崩壊した好中球から放出されたDNAによって網状構造物(neutrophil extracellular traps[以下NETs])が形成された。その構造物にはPTX3が結合していた。PTX3陰性の好中球は核が円形化し、特異な形態を示した。NETsはUC組織の陰窩膿瘍内にも観察され、生体内でも起こりうる現象と考えられた。以上、本研究はUC病変に集積する好中球がPTX3を強く発現することを明らかにし、PTX3はUCの病態や好中球の運命に関わることを示唆した。
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