研究概要 |
我々は、難治性癌である膵癌ならびに胆管癌において、癌の生物学的悪性度とムチン抗原発現が密接に関連していることを報告してきた。また培養癌細胞を用いて、各種のムチン発現を調節しているのが、プロモーター領域のCpG領域のメチル化状態あるいはヒストンH3-K9のアセチル化状態によって規定されていることを明らかにしてきた。昨年度は、膵胆管系疾患検体から約20例の組織を採取し、前年分も併せて約40例に達した。腫瘍本体からの擦過採取、あるいは穿刺吸引して検体を採取する試みも行っており、それも20例以上蓄積された。採取した検体は、mRNAの解析等を行っており、ムチン蛋白の検出を試みている。同時にDNA抽出も行い、メチル化状態の検討も行っている。我々は、従来までの検出限界5%を超える0.1%の感度を有する新規DNAメチル化検出法(特許出願中)を開発した。この解析法により、少量の膵液あるいは胆汁液でも解析が行えるようになり、まずMUC1,MUC2,MUC4に重点を置きDNAメチル化解析を行っている。その結果、胆汁を用いた解析では、通常の浸潤癌の存在範囲とDNAのメチル化状態はよく相関していた。すなわち、癌細胞が直接接する部位から得られた胆汁では、MUC1、MUC4のプロモーター領域での脱メチル化が認められ、腫瘍組織でのMUC1,MUC4ムチンの過剰発現を裏打ちするエピジェネティクスな結果が得られた。一方、MUC2でのプロモーター領域ではメチル化が認められており、腫瘍組織では発現が認められないことと相関していた。膵液に関しては、研究協力施設から術前に採取した膵液を入手できることとなり、より多くの症例の解析が可能となった。
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