研究概要 |
1. がん幹細胞の分離:肺がん細胞株LHK2,乳がん細胞株MCF7,大腸がん細胞株SW480をそれぞれ蛍光色素Hoechst33342で染色し、side population(SP)とmain population(MP)とをそれぞれソーティングした。SP細胞、MP細胞、それぞれをNOD/SCIDマウスに移植し、SP細胞がMP細胞よりも有意に高い造腫瘍性を持っていることを確認した。こうして、さまざまながん細胞株からがん幹細胞を分離することに成功した。 2. がん幹細胞の細胞学的特性の解析:A:細胞死耐性試験:SP細胞、MP細胞それぞれをVP-16やStaurosporin存在下で培養し、細胞死感受性・耐性について各種death assayを用いて解析した。その結果、SP細胞はMP細胞よりも高い細胞死抵抗性を持っていることが明らかとなった。 B:免疫感受性試験:CEP55抗原特異的CTLクローンを用いて、SP細胞、MP細胞それぞれを標的とした細胞障害試験を実施した。その結果、SP細胞もMP細胞と同様にCTLによって細胞障害を受けることを明らかにした。 3. DNAマイクロアレイを用いたがん幹細胞選択的発現遺伝子の網羅的解析:SP細胞、MP細胞、それぞれからmRNAを抽出し、DNA microarrayを用いて網羅的な遺伝子発現解析を実施した。SP細胞で2倍以上発現が高い遺伝子群をスクリーニングした結果、約200種類の遺伝子候補を得ることができた。RT-PCRで発現解析を実施し、さらに約20種類の候補遺伝子を絞り込んだ。 4. RT-PCRによる腫瘍細胞・正常組織の遺伝子発現プロファイリング:様々な腫瘍細胞株および正常組織遺伝子パネルを用いて、(3)で選択された遺伝子に関して、RT-PCRによって発現プロファイリング解析を実施した。その結果、がん幹細胞(SP細胞)選択的に高レベルに発現し、正常組織における発現は限定的な遺伝子を約5種類同定することに成功した。
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