研究概要 |
大腸癌ではイリノテカンなど抗癌剤に対する感受性が患者間で異なることがわかっている。有効かつ安全な治療を行うためにも、抗癌剤に対する適切な感受性の評価が求められている。そこで腸管薬物代謝のモデルとしても広く利用されているヒト大腸癌培養細胞Caco-2およびLS180を用いて、DNAメチル化を指標とした抗癌剤に対する耐性獲得機構の解明を試みた。 両癌細胞よりゲノムDNAを抽出し、Illumina社製HumaMethylation27 BeadCllipを用いて全ゲノム27,578箇所のCpG部位(14,495遺伝子)におけるDNAメチル化状態を調べた。その結果、Caco-2細胞においてメチル化レベルが高い2,381CpG部位(8.6%)、およびLS180細胞においてメチル化レベルが高い307CpG部位(1.1%)が同定された。その中にはCYP1B1などのシトクロムP450薬物代謝酵素の他に、イリノテカンの活性体SN-38の解毒代謝に関わるUGT1A1(UDPグルクロン酸転移酵素)などが含まれていた。8種の大腸癌細胞(Caco-2、LS180、LoVo、SW48、HT29、HCT116、SW620、DLD1)では、CYP1B1遺伝子のメチル化は2細胞(Caco-2、SW48)、UGT1A1遺伝子のメチル化は7細胞(LS180以外すべて)で検出された。これらの薬物代謝酵素は大腸癌細胞においてDNAメチル化により発現が制御されていることが証明され、腸管代謝および抗癌剤感受性における個体間変動の要因となる可能性が示唆された。この研究成果は第26回日本薬物動態学会年会において発表を行った。
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