研究概要 |
本研究は肺腺癌の前癌病変である異型腺腫様過形成病変(AAH)や上皮内癌である細気管支肺胞上皮癌(BAC)の段階でtumor-initiating cellあるいは浸潤癌でのcancer stem cellにあたる細胞を同定し、その病理組織学的な特徴と分子生物学的特性明らかにすることを目的とするものである。まずは、tumor-initiating cellあるいはcancer stem cellにおいて発現しているといわれる細胞表面マーカーが、AAHやBACの切除組織内あるいは肺腺癌の代表的培養株であるA549細胞においてどの程度発現しているかを確かめる必要があると考えた。そこでこれまでにBAC切除例30例、AAH切除例10例を順天堂医院の肺癌切除標本から選び出した。がん幹細胞関連のマーカーの中で組織免疫染色が可能な13抗体:AKR1C1, TM4SF1, NR0B1, CD133, CD24, CD34, CD44, CD326, MUC1, BCRP, Bm1, SP-A, TTF-1:を選び、これらの抗体を用いてBAC、AAHの組織標本およびA549のcell pelletについて組織免疫染色を行っている。これまでに、MUC1, CD44, TTF-1, TM4SF1, SP-A, CD326について免疫染色が終了している。現在、これらの標本を検鏡中であるがぐいくつかのことがわかりつつある。これらのマーカーに陽性に染色されるがん幹細胞様細胞は癌腫の辺縁の所謂、肺胞上皮置換性増殖を示す部分に散在される程度で、その数は非常に少ない。また、必ずしもこれらのマーカーにすべて陽性に染色されるわけではない。A549培養細胞でも同様の染色性が見られる。加えて、正常組織の中でも、終末細気管支から肺報道に移行する部分の細胞にもこれらのマーカーに染色性を示す細胞も散見されている。そのほかの抗体についても順次検討していく予定である。しかし、A549培養細胞でも組織中でもがん幹細胞様細胞の数はかなり少数であるため、当初計画していた切除組織から一次培養した細胞を用いてFACSによる細胞分取は難しい状況であると思われる。このため、組織培養法も含めがん幹細胞様細胞のFACS/sortに向けては改めて方法論から戦略を検討する必要がると考えている。
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