研究概要 |
膵臓癌の発癌機構に、形態形成因子として知られる分泌型糖蛋白Sonic hedgehog(Shh)などヘッジホッグ蛋白が関わっていると考えられている。本研究ではヘッジホッグシグナルに関わる二つの制御因子SIX3(ヘッジホッグ発現自体を制御する転写抑制因子:Shhの上流因子)およびSIL(細胞内ヘッジホッグシグナル伝達に必須な細胞質蛋白:Shhの下流因子)に着目し、以下の成果を得た。 1、収集した膵臓癌症例の免疫組織染色により、SIX3は正常膵管上皮に陽性であるが、膵臓癌前癌病変PanINおよび癌には陰性であること、一方SILは正常膵管上皮に陰性~弱陽性であるが、low-grade PanINから染色性を増し、癌には強陽性となることを見いだした。 2、コンピューター解析によりヒトSIX3遺伝子は転写開始点を含む293塩基中にCpG Islandを有すること(G+C含有率57%,CpG実測頻度/予測頻度0.674)がわかった。ヒト膵臓癌細胞株におけるこの領域のシトシンは、SIX3非発現株ではメチル化され、5'-aza-dC処理により非メチル化されること、また解析した1種類のSIX3発現細胞株ではヘミメチル化の状態であることを見いだした。 3、SIX3を発現しShh発現のないヒト膵臓癌細胞株において、siRNA法によりSIX3遺伝子産物をノックダウンすると、Shh発現が見られた。さらにSIX3共役転写抑制因子TLE1が、正常膵管上皮に発現していることを見いだし、ヒト膵臓癌細胞株においてTLE1遺伝子産物のノックダウンするとShh発現が見られた。 4、ヒトShh遺伝子のプロモーター/エンハンサーを用いたルシフェラーゼレポーター解析により、SIX3はTLE1およびHDAC1と協調してヒトShh遺伝子の肺・消化管特異的エンハンサー依存性にレポーター活性を抑制することを見いだした。
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