我々は肺腺癌の臨床サンプルを用いて、IGFBP-2が正常組織と比較して明らかに高発現していることをreal time PCR、免疫染色、western blotにて確認した。160例の肺癌患者のホルマリン固定パラフィン包埋標本から作製したtissue microarrayのIGFBP-2の免疫組織化学染色では、ほぼ陰性を示す症例から強陽性例まで様々な発現パターンを示すことがわかった。これらの患者の臨床病期、病理学的悪性度、予後などの臨床病理学的データをまとめた結果、IGFBP-2の発現は癌の悪性度と正の相関を示した。IGFBP-2の発現制御はPI3K阻害剤投与またはグルコース制限により細胞内、細胞外のIGFBP-2のタンパクレベルが減少することが判明し、PI3K-Aktシグナルにより制御されることがわかった。また、肺癌のtissue microarrayにおいても、p-Akt(Ser473)とIGFBP-2発現との正の相関もみられた。 ELISA法にて150例の肺癌患者血清のIGFBP-2とIGFBP-3の濃度を測定し、IGFBP-3の濃度が患者によって比較的大きな変動が無いのに対して、IGFBP-2の濃度は患者によってばらつきが大きかったが、健常者よりも高値を示す傾向にあることを見出した。IGFBP-2の血清レベル、原発巣の発現レベルと臨床病理学的因子との相関を詳細に調べ、肺癌の腫瘍マーカーとしての妥当性を検討したところ、病理学的には肺腺癌よりも予後の悪い肺小細胞癌において有意に血清IGFBP-2レベルが高いことがわかった。血清IGFBP-2レベルが予後予測因子となるかについて統計学的解析を行っている。
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