研究概要 |
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)剖検組織から抽出したDNAを用いてミトコンドリアDNAのハプログループを決定するためにサスペンションアレイを用いた解析システムを開発した。ミトコンドリアDNA(mtDNA)は進化速度が高く、多様性が大きい。分子疫学研究のためにmtDNAの型を一連のミトコンドリア一塩基多型(mtSNP)によって規定されたハプログループに分類する必要がある。この分析システムを使用して、我々は日本人において頻度の高い2種のスーパーハプログループ(MとN)と7種の主要なハプログループ(A,D,D4,D5,F,G1,G2)だけでなく、17種のサブハプログループ(B4b,B4c,B5,D4a,D4b1b,D4b2a,D4b2b,D4d1b,D4e1,D4e2,D4g,D4h,M7a,M7b,M10,N9a,N9b)に分類することを可能にした。はじめに、FFPE組織から抽出したDNAでの分析結果が凍結腎組織から抽出したDNAでの分析結果に一致することを確認した。さらに、FFPE腎組織(5161例)から抽出したDNAサンプルを分析し、その有用性を検討した。その結果、4485例(87%)においてハプログループを分析することができたが、13%の試料ではDNAの断片化が著しいためにPCR増幅が不十分であった。FFPE腎組織(4485例)での頻度を、凍結腎組織(1487例)での頻度と比較したところ、ハプログループD4aの頻度が高く、ハプログループM7a,D4b1b,N9bの頻度が低くなる傾向を認めた。このような測定バイアスに留意すれば、今回開発したサスペンションアレイによる分析システムは、病因変異の解析や分子疫学研究のために有用と考えられた。
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