研究者はこれまでValosin-containing protein(VCP)を介した抗アポトーシスと癌の転移との関連についての検討を行い、その転写制御因子としてE74-like factor 2(ELF2)を同定した。本研究は、これまでの研究を発展させ、転写因子ELF2の機能についての検討を行なった。ヒトゲノム上でVCPプロモーター部位におけるELF2結合部位を検索したところ-270と-671の2つの部位に存在することが確認された。ヒト乳癌細胞株MCF7を用い、ELF2 siRNAによる遺伝子発現抑制を行い、VCP発現低下を確認した。Chromatin Immunoprecipitation Assayを用いてELF2のVCPプロモーター部位-270および-671への結合を確認した。VCPプロモーター部位を含んだプラスミドを用いてルシフェラーゼアッセイを行なったところ、-270への変異導入のみではルシフェラーゼ活性の低下は確認されないが、-671への変異導入によりルシフェラーゼ活性の低下が生じ、-270および-671に導入することによりさらにルシフェラーゼ活性が低下することが確認された。これらの検討結果は、ELF2がVCPの重要な転写因子であることを示唆した。臨床検体として肺癌手術標本を用いて検討したところ、ELF2発現とVCP発現との間に正の相関が認められ、ELF2、VCP発現ともに、肺癌の予後因子であることが確認された。
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