研究概要 |
従来から腫瘍内には多数のマクロファージ(Mφ)が浸潤することが知られ、腫瘍関連Mφ(TAM)と呼ばれてその働きが研究されてきた。その結果、TAMは細菌リポ多糖やTh1サイトカインで活性化されたMφの性格を持つM1、IL-10等Th2サイトカインによるM2、TGF-β等で脱活性化された型、の3型に分類できることが示された。一方、近年、腫瘍内浸潤細胞の機能的解析から、骨髄由来の浸潤細胞が免疫反応を抑制することが示され、骨髄由来抑制細胞(MDSC)と呼ばれる。このESCの一部は骨髄球系細胞の中間的な分化・成熟段階にあることが示されたが、従来のMφの3型分類との関係は不明である。 平成21年度の研究ではマウス大腸癌(MCA38)を皮下に移植し、2週間後の腫瘍組織内に浸潤した細胞から磁気ビーズ法を用い、MφのマーカーであるF4/80陽性細胞を取り出してその解析を進めた。方法はリアルタイムPCR法を用い、標的タンパク質を産生する遺伝子がMφで働いているか否かを検出した。標的にはMφの分化・成熟に関連するケモカインとその受容体(CCL2~CCL4,CCL7,CCL8,CCL17,CCL22,CXCL10,CXCL12a,CXCL12b,CXCL12c,CCR2,CCR3,CX3CR1,CXCR4)、サイトカインとその受容体(GM-CSF,M-CSF1,GM-CSFR,GM-CSFRt,M-CSFR1,M-CSFR2,IFN,TGFb1,TGFb2,TGFb3,TNFa)、その他(IL-1b,IL-4,IL-6,IL-10,IL-12,IL-13,IL-15,IL-16,IL-17,c-kit,c-kitL,FoxP3,CD36)のmRNAを設定した。また、Mφに表出される抗原物質(Gr1,CD11b,CD11c,Ly6C,Ly6G,IL-4Ra,F4/80,M-CSFRL1,CD115,CD80,CD14,CD33,CD34)を解析した。その結果、MCA38組織内に浸潤したMφにはCXCL10に代表されるM1とCD206に代表されるM2の両者の性質が表出されていて、腫瘍組織内浸潤MφはM1、M2両者の性格を持った多面的な細胞であることが明らかになった。さらに、Mφの分化・成熟に強く関係するサイトカイン等とその受容体(CCL2,CCL7,IL-1b,TGFb,TNFa,M-CSF,M-CSFR,GM-CSF,GM-CSFR)の発現を抑制するため、現在、そのmRNAに対する短鎖干渉RNA(siRNA)導入Mφの免疫反応に関する働きを解析しているところである。
|