平成22年度にはTAMの多面性を解明するため、主にTAMの機能的解析を進めた。TAMをF4/80+細胞とF4/80-細胞に大別し、それぞれを比重遠心法で分画した。その結果、F4/80+細胞の低比重分画、F4/80-細胞の高比重分画に抗腫瘍活性が確認された。この成績は、TAMの多面性が機能の異なる複数の細胞群の浸潤を反映することを示すものと考えられ、M1型TAMの選択的活性化による抗腫瘍免疫療法の可能性を示唆するものである。他方、マクロファージには可塑性がある可能性を示す報告があることから、TAMの大多数を占めるF4/80+細胞がM1型TAMに変換され得るか否かを検討した。ここでは、抗原提示細胞に再分化させるためにGM-CSF存在下でTAMを培養した。その活性はOVA特異的TCRトランスジェニックマウスOT-IとOT-IIを用いて検討した。その結果、GM-CSF存在下で培養したTAMは、MHCクラスI(OT-Iマウス)およびクラスII(OT-IIマウス)のいずれでも特異的に抗原提示することが示された。さらに、GM-CSF加培養時にマクロファージへの分化をM-CSF受容体に対するsiRNAで抑制すると、抗原提示能の増強は見られなかったが、GM-CSFのみの培養と異なりSTAT1、STAT5、STAT6の有意な発現が観察された。さらに、NFκB経路のp50およびp105は同等であったが、GM-CSF+M-CSFR siRNA処理群ではp65が有意に発現した。これらの成績は、TAMがGM-CSF+M-CSFR siRNA処理により抗原提示細胞により近い性質へと再分化したことを示すものであり、マクロファージの可塑性を利用した抗腫瘍免疫療法の可能性を示すものと考えられる!。
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