研究課題
基盤研究(C)
腫瘍内浸潤マクロファージ(TIM)の由来を明らかにすべく、細胞のマーカープロフィル、産生サイトカインおよびケモカインを解析し、その抗原提示能を検討した。その結果、TIMは従来より提唱されている腫瘍抑制性マクロファージ(M1マクロファージ)、腫瘍親和性マクロファージ(M2マクロファージ)のいずれかに分けることができない、両者の性格を併せ持つ細胞集団であることが明らかになった。一方、M-CSFR siRNA+GM-CSF処理はTIMのマーカープロフィルに変化をきたさなかったが、抗原呈示樹状細胞への分化に必要な細胞内シグナル伝達分子、STAT-1、STAT-5、STAT-6の有意な発現を誘導した。しかしながら、OVA抗原特異的受容体トランスジェニックマウスを用いた検討で、M-CSFR siRNA+GM-CSF処理F4/80陽性TIMおよび未処理TIMのいずれもが抗原提示能を示し、両者間に有意な抗原提示能の差は観察されなかった。これらの結果から、TIMは浸潤した腫瘍組織内の環境に影響されてM1あるいはM2マクロファージなどの表現系を示すものであり、単球系の骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)と呼称されるべき特定の細胞集団ではなく、環境に反応して性格を変えうる、可塑性を保持した細胞であることが明らかになった。
すべて 2011
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International Journal Oncology
巻: Vol.38 ページ: 1409-1419