先に、C型レクチンSIGNR3が単球(Mo)の分化に沿って発現すること、およびこれを新規Moマーカーとして用い、定常状態においてもMoがリンパ節に流入しCD11c^+の樹状細胞に分化することを明らかにした。今年度は、主にSIGNR3をマーカーとして腸炎時におけるMoの動態を検討した。 定常状態の腸におけるSIGNR3の発現を作製した抗SIGNR3抗体(4A4)を用いてWestern blotで検討したところ、弱いながらバンドが確認された。このバンドはSIGNR3欠失マウス(KO)では見られなかった。さらに、腸組織切片の免疫染色およびflowcytometryの結果、SIGNR3発現細胞は腸粘膜固有層に存在するCD11b^+F4/80^+かつLy6C^+のマクロファージ(Mφ)様細胞であった。次に、マウスにデキストラン硫酸(DSS)を用いて腸炎を誘導したところ、腸におけるSIGNR3の発現量およびSIGNR3発現細胞の増加が確認された。このSIGNR3発現細胞は、CD11b^+F4/80^+Ly6C^-であった。続いて、腸炎時の組織切片を抗Mφ mannose receptor(MMR)および抗SIGNR3抗体で染色した結果、SIGNR3^+の多くがMMR^+であり、当該細胞がM2型の抑制性Mφであることが示唆された。最後に、SIGNR3KOにDSS投与したところ、体重の減少幅の増加が示唆された。以上の結果より、定常状態の腸管にはLy6C^+SIGNR3^+のMoからMφへの分化過程と思われる細胞が少数存在し、炎症時には血流中のMoが流入し、何らかの因子によってLy6C^-MMR^+のM2型のMφに分化することが示唆された。さらに、SIGNR3は新たなMoマーカーとして有用であるだけでなく、DSS腸炎においてM2型Mφを介して抑制的な働きを持つことが予想された。 一方、SIGNR3は病原性のC.albicansを認識する。そこで、醐Rで構造を決定した8種の酵母表面糖鎖および可溶性SIGNR3四量体を用いてSIGNR3の認識糖鎖構造をSIGNR1およびヒトDC-SIGNを交えて比較・検討した。その結果、SIGNR3が酵母表面N-glycan側鎖をその還元末端α-mannoseおよびβ-mannan-cappedα-mannoseを介して認識することが明らかになった。一方、SIGNR1も後者型の側鎖は認識したが、DC-SIGNはしなかった。ただし、SIGNR3の同糖鎖に対する結合能はSIGNR1より低くSIGNR family内で糖鎖認識に差があることが示された。
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