本研究計画は、骨髄単核細胞から破骨細胞への分化のメカニズムを解明する目的で、破骨細胞分化因子の受容体RANKの発現制御について、検討するものである。 私どもは、マウスRANK遺伝子プロモータ領域6kbをクローニングし、転写開始部位から約1kb以内の転写因子結合配列に着目して解析を行った。造血細胞分化に関与するPU.1やMITFによるRANK発現促進に加えて、NFATによる制御機構を検討した。破骨細胞分化に必須のRANKL-RANKシグナルの下流では、Caシグナルを介して活性化されたNFATc1が、TRACP、カテプシンKなどの破骨細胞形質遺伝子を誘導する。骨髄単核細胞や前破骨細胞RAW cellでは、RANKL添加でRANK発現が促進し、カルシニューリン阻害剤で相殺された。NFATc1強制発現は、RANK発現を促進し、siRNAによるNFATc1の阻害では、RANK誘導作用が減弱した。NFATc1による転写促進にはRANK遺伝子プロモータのNFAT結合配列(-350)が関与することを示した。さらに、RAW cellにRANKLを添加すると45アミノ酸からなるspilicing variant(vRANK)が検出されるが、vRANKはRAW cellのTRAP発現を抑制し、抗アポトーシス効果を減弱させて、破骨細胞を抑制する機能を有していた。このことから、RANKLは、RANK発現に対する正の制御と負の制御の両者が存在する可能性が示唆された。 さらに、AP-1/CRE候補配列(-240)に着目して、単球~破骨細胞前駆細胞のRANK発現がPKCかPKAのいずれで制御されるかを検討した。PMA処理やc-Fos強制発現でRANK mRNA発現が促進し、c-Fos siRNAで阻害されることから、PKCを介するAP-1転写因子の活性化が関与することが示唆された。AP-1結合部位の詳細については、ゲルシフトアッセイやChIPアッセイにて詳細を解析中である。 これらの成果は内外の学会で報告すると共に、RANK splicing variantについてはMolecular and Cellular Biochemistryに報告し、NFATに関する知見は論文投稿準備中である。
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