心筋梗塞の発症後、心臓ではリモデリングに伴って筋線維芽細胞が増生する。この間質細胞が、心筋細胞との間にギャップ結合connexin43(以下Cx43)を介して電気的結合し、致死的不整脈につながる興奮伝導異常をもたらす可能性がある。この仮説を検証するために、筋線維芽細胞特異的にCx43を欠損させるコンディショナルノックアウトマウスを作成し、これを用いて心筋梗塞後の興奮伝導異常や致死性不整脈の発生が抑制できるか否かを明らかにする。平成21年度には、以下のようにモデルマウスの作成など実験環境を確立とラットを用いた予備実験の結果を得た。 1. 本コンディショナルノックアウトマウスを作成し、これらを交配・繁殖させることにより恒常的にトランスジェニックマウスが生まれるラインを樹立した。 2. 野生型マウスの冠動脈結紮により心筋梗塞を作成し、安定した梗塞モデルの作成が可能になった。 3. テレメーターシステムを用いて、マウスの心電図を2日間の連続記録による不整脈の解析が可能になった。 4. ラット新生仔の心筋細胞を35mm培養皿で単層培養し、その興奮伝導様式をカルシウム蛍光指示薬Fluo4を用いて細胞内カルシウム濃度の時間空間的変化から組織の興奮伝導様式を解析したところ、心筋細胞からなる培養組織では、均一な興奮の波が得られたのに対し、線維芽細胞と心筋の混合培養では、興奮伝導が不均一化し、リエントリー(旋回)性の異常な伝導が発生し易くなることが明らかになった。
|