研究課題
心筋梗塞の修復期には筋線維芽細胞の増生による肉芽組織が形成される。筋線維芽細胞が心筋細胞との間にギャップ結合connexin43(以下Cx43)を介して電気的結合すると、心筋の興奮伝導は異常をきた致死的不整脈につながる可能性がある。これを検証するために筋線維芽細胞特異的にCx43を欠損させたコンディショナルノックアウトマウス(以下Cx43欠損マウス)を作成し、筋線維芽細胞のCx43欠損が心筋梗塞後の興奮伝導異常や致死性不整脈の発生を抑制するか否かを検討、併せて新生児ラットから単離した心筋細胞と筋線維芽細胞を用いて興奮伝導異常の解析を行い、以下の結果を得た。1.Cx43欠損マウスの冠動脈を結紮し心筋梗塞を作成、修復期にあたる梗塞5日後まで連続心電図記録し不整脈解析を行った。対照に野生型マウスを用いた。左心室の概ね45%の領域に心筋梗塞が形成されたが、両群マウス間に梗塞サイズに有意差はなかった。また梗塞作成後4-5日に不整脈の発生頻度は増大したが、有意な致死的不整脈はなく、不整脈の頻度も全心拍数の0.06%程度と低く、両群間でも不整脈発生に有意な差はなかった。2.一方、冠動脈結紮5日後の梗塞巣中の凝固壊死巣と肉芽組織巣の比率を求めると、Cx43欠損マウスでは野生型マウスに比して有意に凝固壊死巣が大きく、肉芽組織の形成が不十分であることが示唆された。このことから線維芽細胞のCx43の欠損が梗塞の修復を遅らせる可能性が示唆された。3.ラット新生仔の心筋細胞を単層培養、線維芽細胞の単層培養組織との間に多数の小孔を有する培養膜を置き各々を裏表に培養したところ、両細胞間のCx43を介する色素移行と心筋の興奮伝導速度低下が確認された。以上、Cx43を介する心筋・筋線維芽細胞間結合は、興奮伝導異常をもたらすことが培養心筋から明らかになった。一方、線維芽細胞Cx43欠損マウスでは対照に比して梗塞修復期の不整脈の発生には有意な差は見られなかったが、梗塞巣の修復が遷延する可能性が示唆された。
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