本研究では申請者が最近、開発したMeTA(methyl-CpG targeted transcriptional activation、メチルCpG配列を標的とする転写活性化)法と遺伝子発現マイクロアレイの組み合わせによってがん細胞において高度にメチル化したCpG island、およびその制御下にある遺伝子を見つけ出し、がんへの関与や診断・治療のバイオマーカーとしての可能性を検討することを目的とした。本年度は、DNA高度メチル化により転写抑制された遺伝子を効率よく見出す方法としてMeTA法が有用であるかどうかを検討するため、MeTAあるいは一般に使用されるDNAメチル化阻害剤を胎児腎細胞株293Tに適用し、マイクロアレイによるそれぞれの遺伝子発現プロファイルを比較検討した。MeTAあるいはDNAメチル化阻害剤により5倍以上発現が上昇する遺伝子を解析対象として、転写開始点上流2-kbから最終エクソンまでにCpGアイランドを含む遺伝子の頻度は、各々、130/139(93.5%)、135/202(66.8%)であった。この結果は、MeTAによって発現上昇する遺伝子が、より高率にCpGアイランドを含むことを意味する。マイクロアレイの結果を検証するため、MeTAで発現上昇が見られる上位10遺伝子についてRT-PCR法を実施し、すべての遺伝子でMeTAでの発現上昇を確認した。さらに、MeTAとDNAメチル化阻害剤で共通に発現が上昇する遺伝子は、わずか26個だけであることから、これまでDNAメチル化阻害剤を用いた解析では単離できなかったメチル化遺伝子をMeTAにより単離できる可能性が示された。これらの結果は、MeTAと遺伝子発現マイクロアレイを組み合わせた方法が、がんにおいてDNAメチル化を介し転写抑制された遺伝子を探索する新たな効率的な方法を提供することを強く示唆するものである。
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