研究概要 |
1.正常マウス肝細胞を分離し,スフェロイドを形成させた後,コラーゲンゲル内に包埋し,培養すると,ラットと同様に,胆管様の樹枝状管腔構造を形成することが明らかになった.これらの細胞には胆管上皮のマーカーであるcytokeratin 19(CK19)が発現していた.また,コラーゲンゲル内での形態形成は,MKK7コンディショナルノックアウト肝細胞では減弱していた. 2.遺伝子組換えによりβ-galで標識されるAlb-Cre/ROSA26Rマウスの肝細胞を分離し,肝内に移植する実験を行った.Recipientsとしては,正常肝細胞の増殖を抑制するretrorsineを投与し,移植直前に部分肝切除を行ったwild typeマウスを用いた.肝細胞移植後,生着したX-gal陽性肝細胞が次第に増殖し,それらの一部がCK19陽性の胆管構造を形成することが明らかになった. 3.ROSA26Rマウス尾静脈からCre発現ベクターを急速に静注すると,肝細胞特異的なβ-gal標識が可能であった.これらの動物に,四塩化炭素,thioacetamide,DDC食などで慢性肝傷害を惹起し,細胆管反応を誘導し,X-galとCK19を同時に染色したところ,一部のCK19陽性細胆管にX-gal陽性細胞が含まれていた. 以上より,マウス成熟肝細胞もラットと同様にin vitroにおいて胆管上皮方向に分化転換しうることが確認され,その過程にJNK-c-Jun経路が関与することが推察された.さらに,まだpreliminaryではあるが,in vivoにおいても成熟肝細胞から胆管上皮細胞への変化が起こることが示唆された.
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