研究概要 |
22年度は、変異型CRY1 Tgマウス(CRY1-AP Tg)の糖尿病発正機序の解明を目的として、主に膵島の週齢変化に着目した解析を行った。十分成熟したCRY1-AP Tg(19週齢)の免疫染色解析から、膵島のインスリン陽性領域は、野生型マウスと比較し減少していることを既に明らかにしていたが、これと並行して膵島でアポトーシスが顕著に誘発されることが新たに判明した。19週齢のTgマウスでは膵島のサイズは野生型と比較し有意に減少している事も判明した。19週齢のマウスで膵島のグルカゴン陽性細胞の分布を調べたところ、野生型では主に膵島辺縁部に分布していたのに対し、Tgマウスでは膵島全域に分布しており、Tgマウスでは膵ベータ細胞のアポトーシスに伴い膵島の構成に異常が惹起される事が示唆された。幼若期(4週齢)のTgマウス膵島では、グルカゴン陽性細胞の分布異常及びアポトーシスはほぼ認められず、膵島のサイズにも有意な差は認められず、膵島の異常は週齢依存的に進行する事が明らかとなった。4週齢及び21週齢のTgマウスの膵臓において、時計遺伝子(Per1,Per2,Rev-erb alpha)のmRNAの発現を調べたところ、共に野生型と比較し発現量は著しく低下している事が判明し、幼若期からのTgマウス膵臓における生物時計機能の異常が示された。さらに、MafAやPdx-1、NeuroD1、Hnf1 alpha等の、膵ベータ細胞の機能維持に重要な役割をはたす転写因子について、Tgマウス膵島及び膵臓での蛋白及びmRNAの発現を調べたところ、野生型と比較し4週齢では顕著な相違は見られなかったが、21週齢では低下している事が判明した。以上の結果より、変異型CRY1 Tgマウスの週齢依存的な膵ベータ細胞の機能不全及びアポトーシスの惹起には、上記の転写因子の発現低下が寄与していると考えられる。
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