研究概要 |
研究代表者らは、全身性エリテマトーデス(Systemic lupus erythematosus,SLE)の自然発症動物モデルであるBWF1マウスを用いて、B細胞ケモカイン(BLC/CXCL13)異所性高発現の病理学的意義を明らかにしてきたが、本年度は、このB細胞ケモカインに対するモノクローナル中和抗体による治療効果の有無とその機序に関する検討を行った。 その結果、BLCの異所性高発現が認められる5ヶ月齢のBWF1マウスにモノクローナル抗BLC中和抗体を2ヶ月間投与した群では、明らかに生存曲線の改善が認められた。抗体投与マウスでは末梢血中のB1細胞が増加が認められ、遊走阻止効果があることが示唆された。一方、濾胞性ヘルパーT細胞(CXCR5^+CD4T細胞)のレベルは末梢血および脾臓において有意な変化は認められなかった。血中IgGおよびIgG抗DNA抗体のレベルにも有意な影響は認められず、抗BLC中和抗体の治療効果はIgG自己抗体産生の制御によるものではないことが示唆された。今後、作用機序の解明やSLE発症マウスに対する治療効果の検討が必要と考えられる。 SLEに対する生物学的製剤として期待された抗CD20抗体や抗BAFF抗体などが、臨床試験から撤退する状況のなかで、本研究により抗BLC中和抗体の有用性が示唆されたことにより、今後の臨床応用に向けた研究が期待される。この点を考慮し、本年度の研究成果は未発表としている。
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